屋外でバイクを保管する場合、バイクカバーには雨、日光、砂、ホコリなどが車体へ直接届くのを減らす役割があります。
車種や装着部品を外から見えにくくするため、防犯上の補助にもなります。
一方で、バイクカバーは車体へ接触します。
風や着脱によってカバーが動けば、接触部分へ摩擦が発生します。その間へ砂やホコリが入れば、柔らかい生地でも車体表面を擦ります。
雨や紫外線から守るために掛けたカバーが、別の損傷を生じさせることがあります。
この記事では、バイクカバーの保護効果だけでなく、選び方、掛け方、外し方、収納、清掃まで含めた日常的な扱い方を説明します。
台風や強風、地震などに備えた保管方法は、別の記事で扱います。
バイクカバーは、屋外から受ける影響を減らす
Hondaは、バイクカバーには雨、紫外線、ホコリなどから車体を保護する役割があると説明しています。
屋根や壁がない場所では、車体を露出したままにするより、カバーを使用した方が外部から受ける影響を減らせます。
ただし、バイクカバーは屋内ガレージの代わりではありません。
製品によっては完全防水ではなく、縫い目や開口部から水が入る場合があります。地面を流れる水や泥の跳ね返り、周囲から倒れてくる物まで防げるわけでもありません。
カバーは、保管場所から受ける影響の一部を減らすものです。
カバー傷は、同じ場所への摩擦で進行する
カバーが動くと、車体へ触れている部分が繰り返し擦られます。
特に力が集中しやすいのは、次のような部分です。
- ミラーやハンドル周辺
- スクリーンの縁
- カウルや外装の角
- タンク上部
- テール部分
- ウインカーなどの突出部分
- トップケースやパニアケースの角
- カバーの縫い目や固定部品が当たる部分
ReBORNでは、バイクカバーとの接触によって細かな傷が入った車両だけでなく、同じ場所が長期間擦られ、塗装や表面層が削れ、下地や外装素材が露出した車両も確認しています。
最初から深い傷が入るとは限りません。
初期には、光を当ててようやく分かる程度の細かな擦れや、艶の変化として現れます。
接触が続くと、艶あり塗装では細かな傷や曇りが目立つようになります。マット・低光沢の外装では、擦れた部分だけにテカリが出ることがあります。
カバー傷は、一度の大きな衝撃ではなく、同じ場所へ加わる小さな摩擦が蓄積して目立つようになる損傷です。
砂やホコリが入ると、柔らかい布でも傷が入る
カバーの内側と車体の間へ砂やホコリが入ると、それらが研磨材のように作用します。
生地が柔らかくても、その間に硬い粒子があれば、カバーが動くたびに車体表面が擦られます。
砂やホコリは、車体からだけ入るものではありません。
カバーを地面へ置く。外側と内側を重ねて収納する。濡れたカバーを砂のある場所で広げる。
このような扱いによって、使用者自身が内側へ異物を持ち込むこともあります。
カバーの材質だけでなく、内側をどのような状態で使い続けるかが傷の進行を左右します。
接触する以上、完全な無傷にはできない
柔らかい裏地やインナーカバーを使用しても、車体との接触自体は残ります。
布が車体へ触れ、風や着脱によって動く以上、摩擦を完全にゼロにはできません。
短期間では目立たなくても、接触を長期間続ければ、細かな擦れ、曇り、テカリなどの変化は蓄積します。
バイクカバーを使用しながら、接触による変化を一切発生させないという条件は成立しません。
完全に接触を避けるには、ガレージ、コンテナ、フレーム付きの簡易保管庫など、外装へ触れずに車体全体を囲える設備が必要です。
カバーを選ぶときに確認すること
バイクカバーを選ぶ際は、生地の厚さや価格だけでなく、使用する車両と保管場所に合っているかを確認します。
主に見るのは次の部分です。
- 車両と装着部品に適合するサイズ
- 前後や中央を固定できる構造
- 内部の湿気を逃がす透湿性や通気部分
- 車体へ触れる内側の素材
- 硬い縫い目や固定部品の位置
- ロックを通せる位置と大きさ
- 製品が指定する耐熱範囲
- 前後を見分けやすい表示
小さすぎるカバーは車体へ強く接触し、ミラー、スクリーン、カウルの角などへ負荷が集中します。
大きすぎるカバーは生地が余り、風で動きやすくなります。
トップケース、パニアケース、大型スクリーンなどを装着している場合は、それらを含めた車体形状で適合を確認します。
車種別の適合表示があっても、後付け部品によって車体形状が変わっていれば、そのまま使用できるとは限りません。購入時は、装着している部品を含めた車体形状に適合するか注意しましょう。
購入後は、実際に掛けて接触状態を確認する
適合表でサイズを選んでも、実際の接触状態までは分かりません。
最初に使用するときは、そのまま長期間放置せず、カバーを掛けた状態を確認します。
- ミラーやスクリーンへ強く張っていないか
- カウルやテールの角へ縫い目が当たっていないか
- 裾が広く地面へ触れていないか
- ベルトやバックルが外装へ当たらないか
- 生地が大きく余っていないか
- 通気部分が塞がれていないか
- ハンドルを指定方向へ切った状態に合っているか
部分的に強く張っている場合は、固定方法だけで解決しようとせず、サイズや形状が車体に合っているかを見直します。
大きく余る場合も、ベルトで無理に締め込めばよいとは限りません。締め付けた場所へ接触圧が集中するためです。
防水性だけでなく、透湿性と通気構造を見る
雨を防ごうとして防水性だけを優先すると、内部の湿気が抜けにくくなる場合があります。
ここでは、防水、透湿、通気を分けて考えます。
- 防水・撥水:外から入る雨水を減らす
- 透湿:生地を通して内部の水蒸気を外へ逃がす
- 通気:通気口などから内部と外部の空気を入れ替える
バイクカバーには、透湿防水素材を使用したものや、内部の空気を逃がす通気構造を備えたものがあります。
湿気が残りやすい保管場所では、防水性だけでなく、透湿素材や通気構造の有無も選択条件になります。
ただし、透湿カバーを使えば内部が常に乾燥するわけではありません。
外気そのものの湿度が高い、縫い目や開口部から雨水が入る、濡れた布が内部にある、通気部分が塞がれているといった状態では水分が残ります。
透湿性は、内部の水分を完全になくす機能ではありません。
製品表示だけで判断せず、実際の保管場所で雨の後に内部を確認します。
使用前に、カバー自体を確認する
カバーを掛ける前に、まずカバー自体の状態を見ます。
- 内側へ砂やホコリが付着していないか
- 内側が濡れていないか
- 縫い目や金具が破損していないか
- ベルトやバックルが外れていないか
- 生地が裂れ、硬い端部が露出していないか
- 前後を正しく判別できるか
内側へ砂や硬い異物が付着している場合は、そのまま使用しません。
軽く払えば除去できる異物でも、車体の上で払えば砂が車体へ落ちます。カバーを車体から離れた場所へ移して確認します。
水で流せる状態なら、まず砂やホコリを十分に流します。それでも汚れが残る場合は、製品の洗濯表示や取扱説明に従って洗います。
洗濯機、洗剤、ブラシを使用できるかは製品によって異なります。指定のない方法で強く洗うと、防水・撥水加工、透湿性、縫い目などを傷める可能性があります。
清掃後は、内側まで乾燥してから使用します。
車体の状態を確認してから掛ける
次に、カバーを掛ける車体を確認します。
車体へ砂、土、泥、鳥の糞などが付着したままカバーを掛けると、それらをカバーとの間へ挟み込みます。
毎回洗車してからカバーを掛ける必要があるという意味ではありません。
ただし、目で確認できる砂や硬い付着物がある場合は、その上からカバーを掛けない方が安全です。
汚れの状態に応じた処置は、バイクの洗車方法|汚れを固着させない日常メンテナンスで解説しています。
カバーを掛ける直前に、乾いたクロスで強く擦って済ませることは避けます。
ここで行うのは、無理に汚れを落とすことではなく、そのままカバーを掛けてもよい状態かを判断することです。
車体が冷えてから掛ける
走行直後のエンジンやマフラーは高温になっています。
高温部分へカバーが接触すると、生地の変形、溶融、発火などにつながる可能性があります。
カバーを掛けるまでの時間を一律に決めることはできません。
所有車両とカバーの取扱説明に従い、高温になる部分が十分に冷えてから掛けます。素手で高温部へ直接触れて温度を確認することは避けます。
耐熱部分を備えたカバーでも、カバー全体が高温へ対応しているとは限りません。
インナーカバー、毛布、ブランケットを併用する場合は、特に熱が残った状態で使用しません。
インナーカバーを使う場合
カバー傷を減らす方法の一つが、柔らかいインナーカバーと屋外用カバーを分けて使う二重構造です。
使用する順序は次のようになります。
- 車体と高温部分の状態を確認する
- 清潔で乾いたインナーカバーを車体へ掛ける
- 縫い目やゴムが外装へ強く当たっていないか確認する
- その上から屋外用カバーを掛ける
- 外側のカバーがインナーカバーごと強く引っ張っていないか確認する
- 指定されたベルトやバックルで固定する
外側のカバーが動いたとき、その動きをカバー同士の間で受けることで、硬い屋外用カバーが車体へ直接擦れる状態を減らせます。
ただし、インナーカバーも車体へ接触します。
外側から押されたり、インナーカバー自体が動いたりすれば、長期間の使用によって細かな傷、曇り、テカリが生じます。
インナーカバーは傷をなくす設備ではありません。
車体へ直接触れる素材を変え、摩擦の進行を遅らせるためのものです。
毛布やブランケットを使用する場合
専用のインナーカバーを用意できない場合は、毛足の長い布、毛布、ブランケットなどを挟む方法もあります。
使用するなら、小さな布を複数箇所へ無造作に置くより、車体から落ちにくい大きさの一枚物を使う方が管理しやすくなります。
主に保護したいのは、カバーの圧力が集中する部分です。
- スクリーンの縁
- ミラー
- タンク上部
- カウルの角
- テールカウル
- ケース類の角
布を掛けた後は、位置がずれていないことを確認してから外側のカバーを掛けます。
使用する布には、次の条件が必要です。
- 清潔で乾いている
- ボタン、ファスナー、金具がない
- 硬い縫い目や端部が外装へ当たらない
- 毛足へ砂やホコリを抱え込んでいない
- 外側のカバーを強く張らせない厚さ
- 車体の熱が残った状態で使用しない
厚い布を追加すると、外側のカバーが小さくなるのと同じ状態になります。
ミラーやスクリーンへ張力が集中する場合は、無理に使用せず、外側カバーのサイズを見直します。
毛布やブランケットも車体へ接触します。柔らかい布を挟んでも、長期間の接触痕を完全になくすことはできません。
カバーを掛ける手順
カバーを掛けるときは、車体上で必要以上に引きずらないことが重要です。
- カバーの前後と内外を確認する
- 固定ベルトやバックルが絡んでいないことを確認する
- 畳んだカバーをシート付近へ静かに載せる
- 前方と後方へ順番に広げる
- ミラーやスクリーンなどの突出部分へ上から被せる
- 左右の裾を最後に下ろす
- 縫い目、ベルト、バックルが外装へ当たっていないか確認する
- 製品の指定箇所を固定する
前後を間違えた場合は、車体上でカバーを回転させません。
一度持ち上げて外し、向きを確認してから掛け直します。
カバーが大きく、一人では地面へ触れずに広げられない場合は、清潔で乾いたカバー専用のシートを横へ敷き、その上で準備します。
固定後に確認すること
固定の目的は、車体へ強く締め付けることではありません。
風による持ち上がりと、余った生地の動きを減らすことです。
固定後は、車体の周囲を一周して確認します。
- カバーが強く張っている部分
- 大きく余っている部分
- 縫い目やバックルが外装へ当たる部分
- ミラーやスクリーンへ力が集中している部分
- ベルトや裾が車体や地面を擦っている部分
- 通気部分が塞がれている部分
強く張っている場所があれば、固定を少し緩めるだけでなく、カバーの位置とサイズを確認します。
余った部分が大きく動く場合は、カバーに備わっている固定機能を使用します。車体へ直接ロープを巻き付けたり、硬い金具を外装上へ置いたりしません。
カバーを外す手順
カバーを外す際も、車体表面を必要以上に擦らないようにします。
- ロック、バックル、固定ベルトをすべて外す
- 裾へ付着した泥や水を車体へ移さないように確認する
- 左右の裾を持ち上げる
- ミラー、スクリーン、ウインカーなどから上方向へ外す
- 車体上で横へ引っ張らず、前後へ分けて持ち上げる
- 内側を地面へ触れさせずに車体から離す
固定部品を残したまま引っ張ると、カバーや車体へ余計な力が掛かります。
外れにくい場合は強く引かず、どこへ引っ掛かっているか確認します。
外したカバーを収納する
外したカバーを地面へ丸めて置くと、内側へ砂や泥が入りやすくなります。
乾いていて、内側も清潔な場合は、次のように収納します。
- 内側を地面へ触れさせない
- 外側と内側を混ぜないよう、内側を内側へ向けて畳む
- 前後のどちらから畳むかを決め、毎回同じ方法にする
- 収納袋へ入れる
- 雨水や砂が入らない場所へ保管する
一人で畳むのが難しい場合は、清潔で乾いたカバー専用のシートを使用します。
濡れたカバーは、長期間収納袋へ密閉しません。
走行のため一時的に持ち運ぶ必要がある場合は、ほかの荷物を濡らさない袋へ分けて入れ、帰宅後に取り出して乾燥させます。
雨の後はどうするか
雨の後は、カバーの外側だけでなく内側まで確認します。
すぐに外せない場合でも、雨がやみ、安全に作業できる状態になった時点で確認します。雨が続いている最中に、車体を長時間露出させてまで外す必要はありません。
確認するのは次の部分です。
- カバーの内側が濡れていないか
- 車体表面へ水分が届いていないか
- インナーカバーや毛布が水を含んでいないか
- 裾へ泥や砂が付着していないか
- 通気部分が塞がれていないか
濡れている場合は、カバー、インナーカバー、毛布類を車体から外します。
管理規約に反しない、風通しのある場所で広げるか吊るし、内側まで乾燥させます。
車体へ水分が届いている場合も、そのまま再び密閉しません。
透湿カバーであっても、濡れた布や液体の水を短時間ですべて排出できるわけではありません。
カバーを洗う判断
カバーの外側が汚れていても、必ずしもすぐに洗う必要はありません。
一方で、次の状態では清掃を検討します。
- 内側へ砂やホコリが入っている
- 泥水が内側まで回っている
- 鳥の糞や樹液などが付着している
- 裾へ泥が固着している
- 透湿部分や通気口が汚れで塞がれている
- 汚れた外側と内側の区別がつかなくなっている
洗い方は、カバーの取扱説明と洗濯表示を優先します。
洗濯機や洗剤を使用できないカバーもあります。高温の湯、強い洗剤、硬いブラシなどによって、防水・撥水加工や透湿性能を損なう可能性があります。
指定が確認できない場合は、購入元またはメーカーへ確認します。
洗浄後は、表面だけでなく縫い目や内側まで乾燥させてから使用します。
接触部分を定期的に確認する
カバーを外すたびに車体全体を細かく検査する必要はありません。
ただし、摩擦が集中しやすい場所は定期的に確認します。
- ミラーの上部
- スクリーンの縁
- タンクやカウルの頂点
- テールカウル
- ケース類の角
- 縫い目やベルトが当たる位置
細かな傷、曇り、テカリ、色の変化が同じ場所へ出ている場合は、カバーが接触している可能性があります。
その場合は、傷を磨いて消す前に、カバーのサイズ、縫い目の位置、固定方法、内側の汚れを確認します。
インナーカバーや布を追加する場合も、同じ場所へ強い張力が残っていないかを見ます。
コーティングでは、カバーの摩擦を止められない
コーティングには、艶や質感を加える、撥水性を持たせる、汚れの付着を抑えるといった役割があります。
しかし、車体とカバーが繰り返し擦れる状態をなくすものではありません。
接触部分を物理的に保護する方法として、PPFがあります。
PPFは「ペイント・プロテクション・フィルム」の略で、透明な保護フィルムを外装へ施工し、本来は塗装へ加わる擦れや接触をフィルム側で受けるものです。
ただし、PPFも傷を完全に防ぐものではありません。フィルム自体にも傷や摩耗が生じ、形状や素材によって施工できない場所もあります。
カバーのサイズや使い方が合っていない状態を、すべてフィルムで解決するものでもありません。
まずカバーの動きと接触を減らし、そのうえで接触が集中する外装を保護したい場合は、ReBORNの車体PPF施工ブランドであるRIDIXELも選択肢になります。
費用を抑える場合は、妥協も必要になる
屋外保管で雨、日光、ホコリなどを減らすには、バイクカバーを使用する意味があります。
一方で、カバーを掛ければ車体との接触が発生し、長期的には擦れ、テカリ、細かな傷を完全には避けられません。
対策の段階は、おおむね次のようになります。
- 車体に合う屋外用カバーを正しく使用する
- インナーカバーや柔らかい布を併用する
- 接触が集中する外装をPPFで保護する
- 車体へ接触しない簡易保管庫を使用する
- コンテナやガレージへ移す
対策を増やすほど、費用だけでなく、着脱、清掃、乾燥、保管の手間も増えます。
保管費用を抑えながら、屋内ガレージと同じ状態を求めることはできません。
どこまで費用と手間を掛けるのか。どの変化なら受け入れられるのか。
屋外保管では、この妥協点を決める必要があります。
まとめ|掛ける前から外した後までがカバーの運用
バイクカバーは、車体へ掛ければ終わる道具ではありません。
日常的な運用は、次の流れになります。
- カバーの内側と車体表面を確認する
- 車体の高温部分が冷えていることを確認する
- 必要に応じてインナーカバーや柔らかい布を使用する
- 車体表面を必要以上に擦らずカバーを掛ける
- 張りすぎと余りすぎを確認して固定する
- 雨の後は内部の水分を見る
- 外すときも車体上で引きずらない
- 内側を地面へ触れさせずに収納する
- 汚れや水分があれば、清掃または乾燥してから再使用する
- 車体の接触部分へ変化が出ていないか定期的に確認する
ここまで行っても、接触による変化を完全にはなくせません。
それでも、扱い方を決めずに掛け外しする場合と比べれば、砂の持ち込み、不要な摩擦、水分の放置は減らせます。
バイクカバーは、車体を無傷にする道具ではありません。
屋外保管で受ける雨や日光を減らしながら、カバー自身が生じさせる影響も管理して使うものです。
台風・強風、地震などが予想される場合の具体的な対策は、次の記事で扱います。
