ガラスコーティングを施工しても、バイクに小傷は入ります。
これは、ガラスコーティングに保護効果がないという意味ではありません。問題は、「小傷」という同じ言葉で、強さの異なる接触や摩擦をまとめていることです。
バイクで実際に問題になる小傷には、ニーグリップ、ライディングウェア、ファスナー、鍵、バッグなどが車体へ直接触れることで生じる傷も含まれます。
コーティングによって軽微な擦り傷への抵抗性が高まることと、こうした直接的な接触傷を防げることは別です。
「傷に強い」と「傷が付かない」は別
ガラス・セラミックコーティングには、軽微な擦り傷や洗車時に生じるスワールへの抵抗性を高める製品があります。
そのため、「小傷への耐性がある」という説明自体が間違いとは限りません。
ただし、耐擦傷性が高まることは、どのような接触に対しても傷が付かなくなることを意味しません。何が、どの程度の強さで、何回接触するのかによって結果は変わります。
四輪車とバイクでは、小傷が生じる場面が違う
車両用のガラス・セラミックコーティングは、四輪車向けのディテーリング・塗装保護製品として広く提供されています。一方で、二輪向けに設計された製品も存在します。
ここで分けて考える必要があるのが、四輪車とバイクでは、塗装面に小傷が生じる場面が異なることです。
四輪車で日常的に生じる細かな傷には、次のような比較的軽い接触があります。
- 洗車用具が塗装面へ触れる
- 洗浄中に細かな汚れを引きずる
- 乗り降りするときに衣類などが軽く接触する
表面の耐擦傷性を高めるコーティングであれば、こうした軽微な入力に対して意味を持つことがあります。
しかし、バイクでオーナーが「小傷」と呼ぶものは、それだけではありません。
バイクの小傷は、車体へ加わる力が違う
バイクでは、ライダー自身が車体へ直接触れながら走行します。
- ニーグリップで膝をタンクへ押し付ける
- 太腿やライディングパンツが同じ場所へ繰り返し擦れる
- 前傾姿勢でジャケットのファスナーがタンクへ当たる
- 腰から下げた鍵や金属製品が車体へ接触する
- バッグや装備品が振動しながら擦れ続ける
これらによって生じた傷も、見た目としては「小傷」です。
しかし、十分な水と洗剤を使った適切な洗車時の軽い接触と、金属製のファスナーや鍵が直接当たる接触を、同じ強さとして扱うことはできません。
さらに、ニーグリップやウェアとの接触は一度だけではなく、同じ場所へ繰り返されます。バイクの小傷を考えるときは、接触物の硬さや力だけでなく、接触回数も分けて考える必要があります。
ゲームの防御力で考えると分かりやすい
筆者がお客様へ説明するときに使う例えがあります。
以下の数字は、実測した硬度、膜強度、耐傷性能を示すものではありません。力関係を説明するための仮想値です。
- 何も施工していない塗装の防御力:8
- コーティングによって耐擦傷性が上がった状態:防御力10
- 十分な水と洗剤を使い、柔らかい洗浄用具で適切に洗うときの入力:攻撃力3〜5
- ニーグリップ、金属製ファスナー、鍵、バッグなどの直接接触:攻撃力10、20、条件によっては100以上
攻撃力3〜5の接触に対しては、防御力が8から10へ上がることに意味があります。
一方で、入力そのものが防御力を大きく上回れば、コーティングを施工していても傷は入ります。
ガラスコーティングが弱いから傷が入るのではありません。
コーティングによる耐擦傷性向上で対応できる範囲と、バイクで実際に生じる接触の強さが異なるということです。
スマートフォンも、傷に強くても保護フィルムを貼る
筆者は、お客様から「ガラスコーティングは傷防止になりますか」と聞かれたとき、スマートフォンを例に説明することがあります。
多くのスマートフォンには、傷への耐性を考慮した強化カバーガラスが使われています。それでも、傷を避けたい人は、その上へ保護フィルムを貼ります。
傷に強いことと、傷が付かないことは別だからです。
車体のガラスコーティングも同じです。塗装表面にコーティング層を形成し、軽微な擦り傷への抵抗性を高めることには意味があります。
しかし、「ガラス」という名称や硬さだけを理由に、ニーグリップ、ファスナー、鍵、バッグなどによる直接的な接触傷まで防げるとは考えません。
「小傷に強い」だけでは、バイクでは説明が足りない
洗車時の軽微な擦れ、金属製ファスナーが直接当たった傷、ニーグリップによる繰り返し摩擦、鍵が当たった傷、バッグが同じ場所を擦り続けた傷。
見た目にはすべて「小傷」でも、車体へ加わった入力は同じではありません。
だからReBORNでは、「小傷に強い」という一言だけで、ガラスコーティングの傷防止性能を説明することは適切ではないと考えています。
コーティングの性能を判断するときは、「傷に強いか」だけではなく、何による傷を、どの範囲まで想定した性能なのかを確認する必要があります。
ReBORNでは、ベースコート型ガラスコーティングを現行サービスにしていない
ReBORNでは現在、ベースコートとして施工するガラスコーティングをサービスとして用意していません。
これは、ベースコートそのものや、その耐擦傷性を否定しているという意味ではありません。現在のReBORNが、サービスとして採用していないということです。
採用していない理由と、ベースコートとトップコートの役割の違いは、バイクコーティングの効果と限界|ベースコートとトップコートの違いで詳しく解説しています。
ReBORNのトップコートは、小傷を付かなくするための施工ではない
ReBORNでは、洗浄後の仕上げにガラス系トップコートを使用したSTANDARD COAT/SPECIAL COATを施工しています。
トップコートに求めている主な役割は、次のとおりです。
- 艶や質感を加える
- 撥水性を持たせる
- 汚れの付着を抑える
- 洗浄後の状態を維持しやすくする
- 車体表面へ保護性を加える
バイクに小傷が付かなくなることを目的として施工しているわけではありません。
ベースコートとして長期間残すガラスコーティングと、ReBORNで使用しているガラス系トップコートは、同じ「コーティング」という言葉に含まれていても役割が異なります。
接触傷を受けるなら、コーティングとは別の保護が必要
ガラスコーティングは、塗装表面に保護性や耐擦傷性を加える方法です。一方、PPFは塗装面の外側に物理的なフィルム層を設け、接触を塗装そのものではなくフィルム側で受ける方法です。
ニーグリップ、ファスナー、鍵、バッグなどが繰り返し触れる場所を物理的に保護したい場合は、コーティングの硬さだけに期待するのではなく、接触を受ける層を別に設けるという考え方が必要になります。
その選択肢の一つが、ReBORNの車体PPF施工ブランドRIDIXELです。
PPFも、どのような接触や衝撃に対しても傷を防げるものではありません。しかし、本来なら塗装面へ直接加わる擦れや接触をフィルム側で受け、塗装状態を確認したうえでフィルムの交換を検討できる点で、コーティングとは役割が異なります。
艶、撥水性、汚れの付着抑制を求めるのか。ニーグリップや装備品による直接接触から塗装面を保護したいのか。目的を分けることで、コーティングとPPFのどちらが必要なのかを判断しやすくなります。
コーティングの役割以上を期待させない
ガラスコーティングによって表面の耐擦傷性が高まることには意味があります。
しかし、耐擦傷性が高まることと、バイクで生じる直接的な接触傷を防げることは同じではありません。
バイクでは、身体、ウェア、ファスナー、鍵、バッグ、装備品が車体へ直接触れます。その接触が同じ場所へ繰り返され、コーティングで対応できる範囲を超えれば傷は入ります。
コーティングには、コーティングの役割があります。その役割以上の性能まで期待させず、何を目的として施工するのかを分けて考えることが重要です。
ReBORNのコーティング範囲はSTANDARD COAT/SPECIAL COAT、車格ごとの料金と作業時間は料金・作業時間一覧で確認できます。
参考資料/出典
- Gtechniq「Everything You Need to Know About Ceramic Coatings」
- Gtechniq「Bike Ceramic」
- Corning「Gorilla Glass」
確認日:2026年8月16日
